ああ、まさに文学の世界! 『つぐない』4月12日公開。イングランドの政府官僚のお屋敷。帰省する兄のために戯曲を描きお芝居をしようと末娘ブライオニーは駆け回る。姉のセシーリアは、使用人の息子ロビーとささいな諍いを起こす。それは身分違いの恋だった。セシーリアとロビーの関係を目撃したブライオニーは、自らの思い込みによりあらぬ誤解をする。その夜、事件は起きた。屋敷を訪れていた従姉のローラがなにものかに暴行される。犯人を目撃したブライオニーは証言する。「犯人はロビーよ」
つぐない:4月12日(土)新宿テアトルタイムズスクエアほか全国順次公開 なんて深く重層的な物語。原作未読だけど、その素晴らしさを十分に味わわせてくれる豊かな映画だ。悲劇に込められたさまざまなテーマは、観る人の数だけ感動と余韻を呼び起こしてくれそう。決して涙に暮れたり、ああ良かったと思うような結末ではないけど、それぞれに自身の人生とどこか重ねあわせてしまうのは、さながら小説の世界を想起するのと同種の体験なのでは。 たったひとつのボタンの掛け違いが連鎖し、狂った歯車は戻らないまま大きな悲しみを呼ぶ。だって、幼かったから…。そうとしか、思えなかったから…。ほかに、どうしようもなかったから…。自分の中に巻き起こる「どうして…」に対して懺悔し続けるブライオニー。おそらくこの世の罪が購われることなんてひとつもない。過去は決して消えないものだから。罪を受けた者、罪を犯した者、双方がそれぞれを許したときはじめてそれは贖罪というものになるんだろう。 センセーショナルな物語に相応しいキャスト。13歳のブライオニーを演じたシアーシャちゃん、なんて魅惑のお顔立ち! アイスブルーの瞳の憂いがたまりません!! 大人に成ってからのロモーラ・ガライも薄幸面がよく似合う。この子にも独特の憂い。キーラは『シルク』に続いて実質主演と呼べない立ち位置。相変わらず強いお顔。で、なんつっても目下大注目中のマカヴォイ君。目元にどことなくラッセル・クロウを感じますが(オレだけ?)、弱さと陰を感じさせるスウィートなお顔で、この悲劇を体現しております。 美しきオールドイングランドから灰色で埋められた戦場まで、映像もおみごと。タイプライティングの音を巧みに配した音楽センスは緊張感を高め、効果的なプロットの立て方がドラマを膨らませ、完成度高し。芸術性を感じさせる、これぞ"珠玉"と呼ぶにふさわしい名作! で、同じくジョー・ライト監督×キーラの『プライドと偏見』をチェック。ああこれも美しきイングランドですね。キーラはこういう時代物とかコスプレがハマるんだなー。凛とした貴族女子がお似合い。これでジェイン・オースティンを語っていいのかわかんないけど、彼女の作品が現代にも通じるっていうの、わかる気がするな。こういうプライドと偏見って、今だっていくらでも転がってるものね。格差とかそういうことではなく、もっとパーソナルなレベルで。ジョー・ライトは物語の世界をキレイに画にするのが上手なんだなー、と感じました。
by april_foop
| 2008-04-12 00:00
| 映像
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