シニカルというかなんというか、重いのに逃れられない! 『4ヶ月、3週と2日』3月1日公開。1987年チャウシェスク政権のルーマニア。女子大生オティリアは、寮のルームメイトのガビツァのために慌ただしく支度をする。それは、非合法である中絶の準備だった。トラブルに巻き込まれながらも選ぶ道のない、忘れられない1日がはじまる。2007カンヌ映画祭パルムドール受賞作。
4ヶ月、3週と2日 [オフィシャルサイト] ホンットにびっくりするわー、この映画。カンヌの人たちはこれがお好み? じっとりダークな陰湿系世界の中で、こっちが逃げ出したくなるようなジリジリした展開。登場人物の周辺を360度囲い込むかのような長回し多用で、会話から何から超超超リアル。進めば進むほど息が詰まっていって、早くなんとかこの場から解放してくれ!と思ったほどに密な空気。 それは多分オティリアが感じ、責め立てられただろう、圧。ついこの間ながら、権利も自由も認められなかった時代の空気の中でもがくってこういうことなのか。抜き差しならない状況にもかかわらず、当事者のガビツァは最後まで切実さが欠けるという間接的な描き方がまた強烈なのよ! 他人事を我が身の如く背負い込んだオティリアが、どんどん追い込まれていく様は、こちらを感情移入させるに十分。なんて皮肉。ああ恐ろしい。女同士のアンバランスな関係もまたリアルだよなー。男性監督とは思えん。 でも終盤でふと思ったのは、ある意味これは命の重さを描いているのかもしれないということ。現代日本ではきっと、"たかが"中絶。その"たかが"のためにオティリアは共犯になり犠牲になり、なぜそこまでというくらいの使命感をもって奔走する。その負荷は、当時のルーマニアでは多分、自由や権利の重さ。今、日本でオレが感じるのは人の命の重さ。観てる間はとにかく逃げ出したかったのに、観終わると不思議にいろいろと思うところが湧いてくるのが、この作品の映画力なのか。 勝手なドラマを予測するこちらを嘲笑うかのような展開にも驚き。巻き込まれ系ながら、最後まで最前線から退かなかったオティリアにいったい何を思うべきなのか…。人には絶対薦めないけど、強烈にズシリな113分!
by april_foop
| 2008-01-23 00:00
| 映像
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