感想/凍える牙(文庫)
d0055469_0475049.jpg第115回(平成8年上半期)直木賞作「凍える牙」@乃南アサを読了。女刑事・音道が、女嫌いデカの滝沢とコンビを組まされ、謎の人体発火殺人と、ウルフドッグなる生物による咬殺事件を追う長編ミステリー。男社会で孤独に生きる音道。難航する捜査の中で少しずつ変わる音道と滝沢の関係。ウルフドッグという生き物の特殊性と、彼を翻弄した悲しい運命。

ズバリ、色んな面で消化不良な作品だったわ。
描写は細かいし、筋道も立ってる。んだけど、なんかしっくりこないんだよなー。理由は3つ。
まず音道&滝沢コンビの微妙さ。それぞれ公私にわたって疲弊してるんだけど、節々のエピソードが効果的じゃないような。音道の家族の存在はリアリティないし、滝沢の家族についてはあまり明かされない。それぞれの心情は長々と描写されるわりに、どーもキャラが立ってこない。てか愛せない。ちなみに、よくあるデコボココンビがトラブルの末にベストパートナーになる、っていう王道パターンでもないみたい。んー微妙。

次に、ある意味、最重要人物(?)のウルフドッグに説得力がない。神聖化に近い勢いで扱われてるけど、読者に納得させるには、不足気味。スゴイ能力を持ってるのはわかるけど、説明っぽすぎんの。デカくて速くて強くて賢くて人間くさい、ってただ書き立てられても弱いでしょ。それに、音道がウルフドッグに憧れる(共感する?)のは百歩譲って理解できるとしても、ウルフドッグが音道を優遇する理由はない。直感的に音道を気に入ったんでしょう、と言われてもねぇ。。
ネットで調べたけど、外見にそこまでの威厳はないでしょー。ま、それは言いっこなしか。

その3。ミステリーとしていただけない。犯人の描写が極端に少ない。殺害の動機、方法と経過、バックグラウンド、被害者との接点といった核心をかなり省いているところ。犯人が薄っぺらいと、事件は盛り上がらない。ということでフォーカスがぼけた感じがして、全体的に必然性が感じられないのよ。

とまあ酷評してるけど、ある程度作者の狙いなんだろーなぁとは思う。要するにこの本、ミステリーというより、音道の生き方を読ませる話なんだよね、きっと。男社会に翻弄され、公私ともに消耗して、迷いながらも進むしかない。理解者は現れない。そこがウルフドッグとの共通点。でもね、そうだとしても、それはそれで物足りないんだよなー。結局、一度も盛り上がらないまま話は終わっちまった。なんとなーく真相が明かされて、音道はずーっと苦悩する。事件が解決してもまったく爽快感ナシ。

結論。初めての乃南作品だったけど、断然宮部センセーのほうが好み。
でもいくつか見た書評は概ね良好でしたよ。この音道が主人公の話はシリーズ化してるみたい。うっかり読んじゃいますか。
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by april_foop | 2005-08-08 00:00 | 文字
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