言葉にはできないけど、日のつくものがあるなぁ。吉田修一『静かな爆弾』読了。早川は外苑で響子に出会った。少しずつ親しくなり付き合い始めた2人。一方、早川は大仏爆破テロ実行者の取材を敢行しようともしていた。言葉にならない想い。伝えたい気持ちと、上滑る言葉。情報と真実の乖離。響子は耳が不自由だった。
中央公論新社 吉田修一先生、どんどんと深いほうに進んでいる気が! もともと人間の内側に敏感な作家さんだと思ってたけど、前作の『悪人』といい今作といい、より社会派的というか、人間×人間×社会って感じの繋がりを描いてるなー。序盤、少し面食らいながら読んでたんだけど(このタイトルも好みではないし)、段々その真意が見え始めてきたら、なんか胸んいろんなものがくすぶりはじめたわ。 誰かを「知る」って行為は、どこからどこまでを指すんだろう。例えば、身長、住所、好きな食べ物、癖。では今考えていることを知ることができるのだろうか。声がなかったとしたら、「知る」ことができる範囲は狭まるのだろうか。では、私たちが今受け取っている様々な情報はなんなんだろうか。小説からそんなとこまで想いを飛ばす威力を持ちながら、同時に恋愛小説としてもちゃんと機能しているのがニクイところ。 これは何度も読み返すたび違った印象を受けそうな一冊。長く本棚においておきたい希少な作品かもしれないぜ。
by april_foop
| 2008-03-20 00:00
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