感想/悲しみが乾くまで(試写)
d0055469_2112634.jpg淋しいけど、優しい。『悲しみが乾くまで』3月29日公開。最愛の夫を亡くしたオードリー。夫の親友であり、しかし薬物中毒患者でもあるジェリーにその死を報せ、そして共に暮らすことを提案する。しかしオードリーの悲しみは癒えず、ジェリーもまた薬物を絶てないのだった。
映画『悲しみが乾くまで』公式サイト|ウーマンエキサイト シネマ(映画)

去年、『アフター・ウェディング』『ある愛の風景』でオレのハートをがっちり掴んだスサンネ・ビア監督のハリウッドデビュー作。環境は変わっても彼女らしく、ときに容赦ないほどに残酷に、しかして根底では優しく人間を描いてますわ。その本質はやっぱり"淋しさ"だと思うなぁ。この作品も9割方重いの(その時点でダメな人も少なくないはず)。だけど最後の1割で、その淋しさを前提としたうえでの温かさとか優しさ、希望を見せてくれるんだよなぁ。やっぱりセンスある!

本当に最悪に深い悲しみってのは、決して癒えることはない。なにをどうやっても受け入れられないことって確かに存在する。すると人間は弱いから、心を閉ざしたり、バランスを失ったり。そして人間はズルイから、それを誤魔化したり、何かにすがったり。監督はそれをまんまリアルに映し出す。でも、否定しない。弱くてズルイからこそ、救いの手を差し伸べてくれる誰かが必要なことを示す。てのを踏まえて、"善意を受け入れて"というフレーズがキーだったけど、まさにこの受容し難き困難と、そこからの脱出を象徴した、素晴らしいメッセージだったわ。シンプルなのがまたいい!

ハル・ベリーも、ベニチオも苦しい苦しい役どころをしっかり演じてました(特にベニチオ!)。オードリーは、欠けてしまった自分のコアを、夫に最も近いモノで埋めようとして、逆に喪失感を募らせてしまう。ジェリーもまた、そんなオードリーの力になりたい、少しでも自分を変えたいと思うのに、それが叶わず躓いてしまいます。どちらも、失ったものを取り戻せないそんな自分に対するもどかしさを抱えながら、それでもなんとかつながって、前を向こうとする。話に飛躍はなく、ほんとギリギリの1歩踏み出せるかどうかっていう葛藤がよかったね。"一人暮らしは淋しいから"は、隣人のセリフだけど、これもまたシンプルかつ本質をとらえていて効果的でした。

瞳のアップを抜き出すスサンネ流の映像世界も健在。これ、決して目の演技とかじゃないのに、思わず映し出された瞳からいろいろと感情を読み取らされてしまうんだよね〜。ただ、ハリウッドとの相性はやや疑問かなぁ。あと、邦題がなー。原題は『THINGS WE LOST IN THE FIRE』。本編観ればわかるけど、いいタイトルなんだ(自分の外にあるものを失っても取り戻せるけれど、自分の内側で失った物は取り戻せない、というメタファーだと思う)。さすがに直訳せえとは言わないけれど、主題を示す含蓄があるだけに、作品のためにももう少し内容とリンクさせてほしかった。どうせ大衆受けじゃなくて作家寄りの監督なんだからさー。

癒しとか、大きな感動とかいう類いは期待するべからず(ホントに暗いよ!)。スサンネの世界は十分堪能させてもらえるので、ファンは必見! ボクは満足です。
[PR]
by april_foop | 2008-02-14 00:00 | 映像
<< 感想/うた魂♪(試写) 神と天使と悪魔って何者? >>