感想/ある愛の風景(試写)
d0055469_2112431.jpgすげえところを衝いてくる。『ある愛の風景』12月1日公開。弟のヤニックが出所した日、ミカエルはアフガニスタンの復興支援へ。その地でミカエルの乗ったヘリが撃墜されたという報せが届き、遺された妻・サラと2人の娘、そしてミカエルの家族は哀しみに暮れる。しかし、死んだと思われていたミカエルは生きて帰ってきた。変わり果てた姿になって。
『ある愛の風景』公式サイト

『アフター・ウェディング』もそうだったけど、"デンマークの恐るべき才能"というのはホントだな。スサンネ・ビア監督、今作でもすごいところを切り取ってくる。物語としてのポイントは2つだけ。ミカエルに起きた悲劇、そして生還。たったこれだけなのに、そこから生まれる人間の感情をこうも深々と描けるなんてセンス以外のなんだというのか。

この人の撮る画は、例えば登場人物の「眼」になってその視界をクローズアップしたり、その「眼」そのものに迫ったり、誰かの「心」になって心象風景のようなエフェクトをかけたり、構図や技術を駆使して人間の生きた感情を否応無く抜き出す。しかも、それがただ凝った画ってだけじゃなくて、ストーリーとしての起伏はなくても、この変幻自在の映像で背景まで十二分に語りかけて2時間弱を成立させてるんだよ。すごいなー。

ちょっとのことで揺さぶられる人間の感情。劣等感、孤立、自己嫌悪、戸惑い、そして普遍の愛。全然明るい話じゃないし、盛り上がりなんて一切ないから人には薦めづらい。だけど、静かに強く深く侵食してくる作品。そして最後にはほのかな救い。てんで地味なれど、本質のある秀作です。

d0055469_17443969.jpgというわけで、旧作の『しあわせな孤独』を事前チェック。不幸な1つの事故で露になってく、いくつもの淋しさ。あ、理解った。この監督が映し出すのは、人間の抱える"淋しさ"。孤独という意味だけじゃない、人間がおそらく半永久的に持ち続けてくだろう"淋しさ"を。弱くて脆くて危なっかしくて、そして淋しい人間をこれまた冴え渡った映像感覚で収めてます。

短いスパンで3作品観たけど、どれも本質を捉えてて、すっかり心掴まれてしまいましたわ。好きな監督が1人増えましたです、はい。しかしこんな繊細な物語をハリウッドリメイク? どんな仕上がりなのか気になりますし、ビア監督のハリウッドデビュー作は楽しみで仕方ないぜ!
[PR]
by april_foop | 2007-10-27 00:00 | 映像
<< 感想/ここに幸あり(試写) 感想/ナンバー23(試写) >>