性同一性障害をスタート地点にしたジェンダーフリーと恋と友情の物語。男とは、女とは何なのか。そして男と男、男と女、女と女についてまでも描いた東野圭吾『片想い』。ミステリは舞台装置に徹しつつ、テーマはかなり深遠な広がりを見せる。すなわちそれはアイデンティティ。たどりつく先は感動でも感銘でもなく、人類が永遠に抱き続けていくであろう"片想い"であります。
性同一性障害自体は導入に過ぎず、ここを起点にして話はかなりいろんな方向を向く。しかも、殺人犯は誰か、みたいな絶対的回答が用意されてる問題じゃないだけに(もちろん犯人は誰か、という筋も含まれるけど)、読んでいてもなかなか手応えを得づらかったり。本文中にも出てくるけど、男と女は白と黒!てわけにはいかない。読み進める上で、常にそのグレーゾーンを想わずにいらんないのだ。 ちょっとズレるかもだけど、普段「男だから」とか「女ならば」といったカテゴライズに違和感あるんだよね。日常的に行われてるその区分けって適切な性差といえるのか、それとも個人差なのか。便宜的(慣習的?)に男と女を定義付けして、本質的な個体差を見逃してやいないか。とね。gender(社会的、文化的な意味での性差)とsex(生物学的性別)って言葉では明確に別れていても、実態はそんなきっぱりわけられず。難しいなー。 そんな人類学的テーマを孕んだ一作。骨太で読み応えありました。うーん、男とは、女とは……。 で、スピンオフ企画の『サンタのおばさん』。作中に劇団の出し物として名前だけ登場してたものが絵本となってリリース。サンタサミットに新たに加わったのはなんと女性。前例のない"女性サンタ"ってアリ? を切り口にジェンダーフリーを問いかける。ストレートでわかりやすく、とてもいい絵本。大人にも子供にもオススメだね。特にキッズが、一方的な「当たり前」に疑問を持つきっかけになるかも。 てことで、6/29に東野センセーが新刊『夜明けの街で』をリリース。絶対買うと思いマス。 <買いました(リンク先はレビュー)
by april_foop
| 2007-06-24 00:00
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