東野圭吾自らが、名探偵・天下一と、大河原警部を使って本格推理を揶揄するようなお気楽物語。
まずは短編集『名探偵の掟』。各章で、本格推理の頻出パターンやお約束事を自虐的に切る。そもそも怪事件のそばに毎度毎度名探偵が出くわすのはおかしいだろ!とか、やれ密室密室ってまたかよ!とか、名探偵だからって一般人がそんな勝手に捜査してまわっていいわけ?とか、警察役がオマヌケなミスリードばっかしてていいの?とか、捜査上の秘密を探偵にベラベラしゃべるな!とか、真相解明時に全員集合・名探偵独演ってのいいかげん恥ずかしくない?とかそういうツッコミ話。 基本、本格推理の流れに乗せつつ、天下一と大河原が小説世界でそれぞれの役を演じているという設定。なので、カメラの回ってないところでは、名探偵が「読者もよく飽きないよね」と言ってみたり、警部が「オレの役目はここで間違った容疑者を追及すること」とか言ってたりするのが面白い。おそらく著者自身が本格推理を描いてるうちに抱き始めた疑問をおもしろおかしくまとめた、って感じですね。 で長編書き下ろし『名探偵の呪縛』。東野圭吾が突如、天下一になってしまい、不思議な事件に巻き込まれる。本格推理なるものが欠落した世界で辿り着いた真相。その世界は著者本人の過去だった!? 『名探偵の掟』の反動か、本格推理を若干擁護するような内容。自分とミステリのルーツをたどったような半自伝的な内容になっております。若干消化不良ではあるかなー。 常に新しい分野を切り開く著者らしい本だね。こんなのも描ける振り幅の広さは、さすがですなー。
by april_foop
| 2006-10-14 00:00
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