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感想/眠りの森(文庫)
感想/眠りの森(文庫)_d0055469_22221075.jpg東野圭吾『眠りの森』読了。『卒業』の加賀が刑事になって再登場するっつーじゃないの! そりゃ楽しみですって。

とあるバレエ団のスタジオで起きた殺人事件。関係者は加害者バレリーナの正当防衛を主張するものの、どこか釈然としない。限定された空間で交錯する、結びつかない意図。バレエに捧げた青春とそれを取り巻く人間模様。閉ざされた世界に足を踏み入れる加賀。そこで出会ったプリマ。真実を隠しているのは一体誰?

てことでクラシックバレエがモチーフな本作。東野氏、バレエにも精通してんだー、と思ったら、1年以上かけて取材したとか。スゲェ。しかも、小説家で食ってくために、あえて自分の興味がない分野にトライしてみたっていうから立派。ステイ・ハングリー、大事です。

キャラはけっこう立ってるし、ストーリーにも不自然さはない。世界観もいいと思う。だけど、トータルでは薄い。せっかく魅力ありげなキャラたちなのに、掘り下げ足りない。バレエ団という閉鎖的な世界なんだから、とことんディープに心の内側を見せてほしかった。そしたらもっと各人物に入り込めて、いっそう深く物語に落ちただろーに。群像感が欲しかったナ。

決定的に欠けていると思ったのは、加賀が恋をする過程。かなり硬派と思われる人格の割に随分とイージー。浅岡未緒の人間性や過去についてもっとエピソードほしかったし、たったあれっぽっちの接触であっさりフォリラブは全然腑に落ちなかった。いい本だとは思うけど、きっと今の氏なら何倍も魅力的に描けるような気がする。東野ラブだからこそ、すっかり佳作では満足できなくなった今日この頃。
by april_foop | 2006-05-10 00:00 | 文字
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