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感想/ひなた(単行本)
感想/ひなた(単行本)_d0055469_8482019.jpgお気に入り作家、吉田修一の最新刊「ひなた」を購入。JJで連載してたやつに加筆修正したんですと。そりゃ知らんかったわ。

新堂レイ、その彼氏、その兄、その嫁の4人が代わる代わる主人公に成る構成。それぞれの春夏秋冬をめぐる、都合16の章立てとなる。著者らしい、特別な事件が起こるわけではないスモールストーリー。身内同士の話なので、ごく自然に1つ1つがリンクしてって、ついついのめりこんじゃうのは魅力的なキャラとさりげないプロットのおかげ。各章を媒介するのは秘密。絶品でござい。

それぞれが抱える事情はなかなかにヘビー。元ヤン的一家、腹違い兄弟、同性愛(またかい!)、不倫。だけどそいつらをこれみよがしに突きつけないから、重苦しくも湿っぽくもない(そこが村山由佳と大きく違うのだよ!!)。本人にしかわからない痛みだ苦悩だってのは大小どこにでもあるだろうけど、人間関係の中でそーゆーのが表面に出る事ってそう多くはないはず。みんな自分の中で折り合いつけてんだから。そのへんのサジ加減が実に気持ちいいのよ。

読めばわかるこの秋風のような爽快感。一抹の寂しさもちょっぴり切なくていいじゃない。この読後感がやみつきになる吉田修一でした。万人受けとまでは言わないけど、オススメしたい一冊。
by april_foop | 2006-03-13 00:00 | 文字
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