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感想/九月の四分の一(単行本)
感想/九月の四分の一(単行本)_d0055469_21212851.jpgちょっと久しぶりの大崎善生作品。「九月の四分の一」なる短編集。

表題作ほか4つの恋愛物語が並ぶ。どれも大崎氏らしい、淡〜い感じの文体。ファンタジー要素を抜いた村上春樹というか、ちょっと間接的な江國香織というか。まあそんな感じ。なんにせよけっこう好きなタイプ。言い回しや比喩表現がやらかいのが好み。

この人、回想シーンが好きですね。今なお忘れない昔の想いを語りがち。今回も実に3話にわたって回想ベースの物語。あと、ちょいエロ好きだね。やりそうでやらない、寸止めのプリンスです。それがまた蒼さを強調するツールになってるのかと思われます。その他、主人公が物書きだったり、中央線沿線在住とかが頻出キーワードかな。ツェッペリンも好きっぽい。

とにかく非常に読みやすい。でもそれほど単調ではなく、かといってものすごく示唆に富んでるわけでもなくって、ちょっとした日々と人々の機微を投げかけてくれます。単純に物語を楽しんでもいーし、自分の何かと重ねあわせることもできると思う。スラスラ読めて後腐れもなく、あー良かったな、と思えるような。逆にいえば深く突き刺さることは少ないのかもしれないけど。

上手く撮れば、良質の映像作品にすることもできそうな、そんな作家です。未読の方はご一読あーれー。
by april_foop | 2005-10-14 00:00 | 文字
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